校舎ブログ

CRISPR/Cas9

こんにちは、担任助手の真木です。
最近文系寄りの内容でずっと書いていたので、
そろそろお前は本当に理系なのかと突っ込みをもらいそうということで、
今回は科学の話題です!

ノーベル賞が発表されましたが、今後ノーベル賞を取りそうな技術についてです。

皆さん「クリスパー・キャスナイン(CRISPR/Cas9)」ってご存知ですか?
生物選択の人は知っていたりするのでしょうか?

ここ十数年の生命科学分野における大きな発見は、
個人的に「iPS細胞」「クリスパー・キャスナイン」だと思います。
もちろんその前段階のゲノム解読技術とその向上も大きいですが。

iPS細胞はさすがに皆さんご存知ですよね。
京都大学再生医科学研究所教授であった山中伸弥教授
“Induced Pluripotent Stem Cell”の頭文字です。
2006年に発表された人工多能性幹細胞で、2007年に人間の細胞での作製が発表され、
再生医療分野や新薬開発において重要な役割を果たしています。
山中伸弥教授は2012年のノーベル生理学・医学賞を、
ES細胞やiPS細胞のもととなるクローン技術の開発ジョン・ガードン教授と共同受賞されました。
iPS細胞より前にES細胞が開発されていましたが、受精卵を用いるという倫理的問題が存在していました。
しかし、iPS細胞は体細胞から比較的容易に再現性高くリプログラミングできるのです。
また、自分自身の体細胞から作った場合は拒絶反応は起こりません。
他に「腫瘍が形成されるのではないか、という懸念がありました」(※1)が、
「大幅に安全性を高めることに成功しています。」(※1)
(※1)京都大学iPS細胞研究所ホームページ(http://www.cira.kyoto-u.ac.jp/j/faq/faq_ips.html) 2017/10/9アクセス

しかし、自分のiPS細胞を作るには現在何千万とかかり、そのままでは富裕層しか使えない技術になります。
ある程度種類を作ってストックしておくにしても、「HLA」という免疫に関するタイプが何万種類もあるので難しいです。
そこで、拒絶反応があまり起こらない特殊なタイプの方のiPS細胞を作り、
それをいつでも使えるようにする計画が進んでいるそうです。


さて、本題の「クリスパー・キャスナイン」に入ります。
これは、ゲノム編集技術の一つ(他には、ZFNやTALENなど)になります。
この技術によりDNAの狙った部分を切断することができます。
それまでの遺伝子組み換え技術では、ウイルスなどを用い遺伝子を導入するのですが、入る位置が運任せのため、
効率がとても悪く、目的のものが得られるのに相当な労力と時間を要しました。
さらに、高等生物になるほど難しくなりました。
しかし、この技術は効率よく容易にDNAを2本鎖開裂できます。
さらに、CRISPR-Cas9はZFNやTALENに比べ効率がよく、とても簡便なのです。

また、切断されたDNAは非相同末端連結(NHEJ)相同組換え(HDR)で修復されます。

非相同末端連結で修復される場合、前後数bp(base pair; 塩基対)が欠損するので、
結果として、例えばなんらかの病気を発現する遺伝子を除去できます。

切断されたDNAが相同組換え修復される場合を利用すると、
逆になんらかの遺伝子を導入することができます。

この技術を受精卵に適応すると子孫にその影響を残せますが、
ヒトに関しては倫理上の問題から行わないことになると思います。
遺伝子疾患についてどう考えるかの議論はあると思いますが。。。

ただ、自分の体細胞(e.g. 免疫細胞)に変異を与え、それを戻すことは治療として行われることになるでしょう。
これにより、HIVの治療が大きく変わるかもしれません。

なお、この技術にはオフターゲット変異と呼ばれる問題が付きまといます。
簡単に言えば、標的以外のbpに変異を与えてしまうかもしれないということです。
そのため、作成後の精密なスクリーニングは依然必須です。

万が一受精卵に適応する場合には、このオフターゲット変異があれば
子孫に予期しない変異が加わってしまうことになり大変危険です。


この技術がどのように活かされていくかについて、
独立行政法人科学技術振興機構研究開発戦略センター ライフサイエンス・臨床医学ユニットの調査報告書『ゲノム編集技術』(2015.3) pp.11-12
(2015.4から法人名称が国立研究開発法人となっています。)
から引用(改行位置は改編しています)します。

<応用研究(創薬)>
 近年、新薬の開発成功率低下が大きな問題となっている。
その解決のためには、疾患のターゲットを分子レベルでしっかりバリデートすることが重要であり、
そのためにもヒトの病態を反映したモデル細胞、モデル動物の作成が求められる。
これまでの技術では、それらのモデル系の構築に長い年月を要し、複数遺伝子の同時改変は極めて困難であった。
ゲノム編集技術を用いることで、短時間で多くのモデル系を構築することが可能となり、
また複数の遺伝子を同時に改変可能となるなど、創薬加速へのインパクトは極めて大きい。

<応用研究(再生医療)>
 ゲノム編集技術は、iPS細胞のゲノム配列を迅速かつ正確に改変できる革新的な技術である。
特に、疾患モデル細胞の作製や、患者由来の細胞から作製したiPS細胞に対する遺伝子修復法については、
ゲノム編集技術への期待は大きいと考えられる。

<応用研究(農水畜産)>
 ゲノム編集技術は、従来の手法では標的遺伝子の改変が困難であった農水畜産物においても有効である。
ただし、ゲノム編集技術を農水畜産へ活用していく場合、十分な議論とルール作りが必要である。
まず、将来的にはゲノム編集技術によって作出された作物が海外から入ってくる可能性があることから、
ゲノム編集技術を用いて作出した品種と、既存の品種改良法(化学変異原や放射線、重イオンビームを用いた変異誘発)により作出した品種との違いなどを化学的に検証し、安全性に関するエビデンスの蓄積が課題である。
また、それら科学的エビデンスに基づいて、国民へリスクとベネフィットについて正しく伝えていく取り組みが非常に重要である。

これから生命科学分野とその研究を用いた創薬・医療・農水畜産技術の研究から目が離せません!

 

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<引用文献>
京都大学iPS細胞研究所ホームページ(http://www.cira.kyoto-u.ac.jp/j/faq/faq_ips.html) 2017/10/9アクセス
独立行政法人科学技術振興機構研究開発戦略センター ライフサイエンス・臨床医学ユニットの調査報告書『ゲノム編集技術』(2015.3) pp.11-12

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